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( 2019.3.7  夕刊フジより)

「眼底カメラ検査」早期発見で緑内障の失明を防ぐ

日本人の中途失明原因の25%を占め、第1位の緑内障。その罹患(りかん)率は、40歳で20人に1人、70歳で10人に1人とされる。定年世代にとっては、決して他人事ではない数字だ。人生の幕を下ろすその日まで視覚を持ち続けるために、いまできることとは何なのか。

 「眼球」と書くことからもわかるように、目の形は球体だ。これが真ん丸になるように、眼球の中では房水(ぼうすい)という水が流れ続けることで、適度な圧力を保っている。

 ところが、何らかの理由で房水の流れが滞ることがある。流れの滞りにより眼球内部の圧力(眼圧)が異常に高まると、眼球の奥(眼底)を走行する視神経が押し潰されてダメージを受ける。これが緑内障の正体だ。

 視神経が障害を受け、視野が部分的に欠けていく。歩いていて人とぶつかったり、車の車庫入れで壁に擦ってしまうなど、自分ではそのつもりがないのに周囲との距離感に異常が生じることも少なくない。

 しかし、これまで取り上げてきた老眼や白内障同様、緑内障の症状も日々少しずつ進んでいくため、自分ではなかなか気付きにくい。そして、発見を遅らせる要因の一つに、じつは「定年」があるというのだ。

「緑内障の診断に不可欠なのが眼底カメラです。これは人間ドックのメニューには組み込まれていますが、自治体などの健康診断には入っていないことが多い。会社で人間ドックを推奨されていた時代は無条件で眼底カメラを撮っていたのに、定年退職した途端、その機会を失う人が多いのです」と語るのは眼科専門医の平松類医師。

 病気にかかるリスクが高まる年齢になって、会社の保護枠から外されてしまう-。定年とは無情で非情なものなのだ。

 とはいえ、ここで会社を恨んでも始まらない。

 「会社を辞めたら年に1度は眼底カメラを受けること-という決めごとを作るしかありません。自由診療で医療機関によって多少の価格差はありますが、1000円前後で受けられます」

 もし緑内障と診断されたら、どんな治療法が待っているのか。

 「基本は点眼薬による病気進行の抑制です。早期で見つけて点眼薬を使えれば、99%は失明を防ぐことが可能です」

 他にも、瞳の隅に穴をあけたり、詰まっている排水口を拡げる手術を行うこともあるが、出血や感染症、低眼圧、あるいは手術をしたのに眼圧が下がらないなどの合併症のリスクもあるので、安易に手術に飛びつくのも考えものだ。

 iPS細胞を用いた再生医療の研究が進んでいるとはいえ、従来の医療技術では、一度壊れた視神経を蘇らせることはできない。緑内障と診断されたら、一日も早く治療を始めて、進行を遅らせる-という基本的な考え方だけは持っておきたい。(中井広二)

 ■医療監修/平松類(ひらまつ・るい) 医師。昭和大学医学部卒業。二本松眼科病院勤務。昭和大学非常勤講師。医学博士。最新刊に『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる!ガボール・アイ』(SBクリエイティブ刊)