概要
加齢黄斑変性は、高齢者に発症する病気で、網膜中央(黄斑部)が破壊されて中心が見えにくくなる病気です。脈絡膜(網膜の裏の膜)に新生血管が発生して、黄斑部の出血や 浮腫が原因で黄斑部が破壊されていく滲出型と、黄斑部が徐々に枯れるように薄くなっていく 萎縮型の2つのタイプがあり、日本では前者のほうが圧倒的に多いです 。また、広義の滲出型加齢黄斑変性症には脈絡膜新生血管が明らかなもののほかに、脈絡膜の瘤状の血管拡張を特徴とするポリープ状脈絡膜血管症(PCV)と、黄斑部の網膜内の新生血管が脈絡膜新生血管と 吻合するようになる網膜内血管腫様増殖(RAP)の2つの病型があります。
この病気のために矯正視力が0.1未満になってしまうこともありますが、見えにくくなるのは主に中心で、周辺の視機能は最後までわりと保たれます。加齢黄斑変性は失明すると言われていますが、この場合の失明は視力を失うという意味で、真っ暗になって全く見えなくなるというわけではありません。
症状
網膜中央の黄斑部が障害されるために、視野の中心部分が暗く見えにくくなる中心暗点が主な症状です。これに伴い、視力低下や変視症(物がゆがんで見える)などの訴えもよくみられます。当然視力は低下し、新聞の字や人の顔などがわからなくなってきます。ただし、片眼だけの場合は、反対側の眼で見ていて、症状に気づかないこともあります。両眼同時に加齢黄斑変性が発生することはほとんどありませんが、片眼が見えなくなった後に、数カ月あるいは数年経過して他眼も発症して見えなくなると、車の運転免許の更新はできなくなり、さらに食事など日常生活にも差しさわるようになります。その為にも、時々片目づづ隠して、それぞれの目の見え方を確認しましょう。それで、異変に気づいたら早めに眼科を受診してください。
診断
1)眼底検査
滲出型加齢黄斑変性症では 眼底眼底 検査をすると、黄斑部に網膜下出血がみられ、 漿液性漿液性 網膜剥離や網膜色素 上皮上皮 剥離と呼ばれるむくみがみられます。
2)螢光 眼底眼底 造影検査
螢光眼底造影を行うと、滲出型の加齢黄斑変性は脈絡膜新生血管が広がっているさまがよく捉えられます。 造影剤造影剤 の種類によってフルオレセイン螢光 眼底眼底 造影検査とインドシアニングリーン赤外螢光 眼底眼底 造影検査の2種類がありますが、両者を行うことで正確な診断ができます。
萎縮 型の加齢黄斑変性は、螢光 眼底眼底 造影検査で網膜色素 上皮上皮 の 萎縮萎縮 が地図状に広がっているのがみられますが、新生血管はなく、螢光が漏れてくるような所見はありません。
3)OCT検査(光干渉断層計)
OCTという網膜の断面をみる検査では、網膜の深い層が盛り上がっていたり、むくんでいたりするさまが観察できます。
4)中心視野検査
視野検査を行うと、様々な大きさや程度の中心暗点がわかります。
治療
数年前まで、効果的な滲出型加齢黄斑変性症の治療は無かったのですが、ここ最近治療法の目覚しい進歩がみられます。滲出型加齢黄斑変性症の治療目的は、正常の黄斑部網膜構造を障害することなく、脈絡膜新生血管板を消失させることです。従来の治療法であるレーザー光 凝固凝固 や新生血管抜去術などの手術治療は、正常網膜をも障害しやすいので、治療自体による視力低下の危険性が高く、現在ではあまり行われていません。
1)光線力学療法
この治療法の原理は、脈絡膜新生血管板に取り込まれやすい光 感受性物質であるベルテポルフィン(一般名:ビスダイン)を静脈注射で 投与し、その15分後に弱いレーザー光を病変部位に照射します。正常の網膜組織を障害することなく、病巣内の新生血管が閉塞します。ただし、初回は入院が必要である上、術後5日間日中の外出が禁止されます(赤外線で肌がただれてしまう副作用がある為)。また、再発したり、効果が認められない場合は、3カ月ごとに治療を繰り返します。
2)眼内(硝子体内)注射
血管新生にかかわる炎症惹起物質を押さえ込むステロイド剤や血管新生誘発因子の阻害剤(抗VGEF抗体)を、眼球内(硝子体内)に注射する方法があります。光線力学療法と併用して行うこともあります。この注射だけの場合は入院の必要なく、日帰りで行えます。
3)サプリメント内服
萎縮型加齢黄斑変性症は、ビタミン剤内服が発症の頻度を下げることが米国での大規模試験で証明されました。ルテインをはじめビタミンE、Cやベータカロテンなどを含んだサプリメントの服用で、発症の危険性を減らすことができる可能性があるとされています。