黄斑前膜

概要

 眼底の網膜の手前に膜が張って、網膜の中心(黄斑)がそれに遮られてしまう病気です。加齢による硝子体の収縮が関係しているので、やはり高齢者に多く、女性に起きやすい病気です。頻度的には黄斑円孔よりも多くみられます。
 加齢による後部硝子体剥離が起きる過程で、硝子体の後壁(硝子体の皮質)だけが網膜側に残って張り付いてしまいます。そのあと、その硝子体皮質を骨格にして、そこに新たな細胞が増殖してきたり眼球内のゴミのようなものが付着して、少しずつ黄斑前膜が形成されます。
 黄斑前膜の約9割はこのように後部硝子体剥離のあとに起きるタイプです。残りの約1割は、後部硝子体剥離がまだ起きていない段階で、硝子体の後壁が骨格になって膜が形成されるケースです。

症状

 黄斑前膜の形成が進むにつれて、ゆっくりと視力が低下していきます。
 また、物が歪んで見えたり、大きく見えたりもします。

診断

 眼底が透見できる場合は、散瞳して眼底検査をすれば、診断は容易につきます。また、黄斑前膜の程度を調べるために「OCT(光干渉断層計)」を用いた検査を行う場合もあります。

治療

 黄斑前膜の約5%は自然治癒することもありますが、治療の基本は手術です。黄斑前膜の手術では、まず最初に後部硝子体を切除し、そのあとで黄斑前膜を剥がします。その手術の時期ですが、視力がかなり低下してしまってからだと、前膜を除去しても十分な視力を得られないことがあります。かといって突然失明してしまうような病気ではないので、視力が良いうちは手術を急ぐ必要もありません。視力が低下し始めたり、歪みが強くなった段階に手術を行うのが一番効果的だと思われます。
 術後、約2週間ぐらいで網膜の修復が進み、視力は改善し始めます。術前の視力が低い場合は、網膜視細胞の変性が進んでしまっていることが多く、術後も視力が十分には回復しないケースがあります。
 手術の合併症で一番多い合併症はやはり白内障です。このため多くの場合、黄斑前膜と同時に白内障を手術してしまいます。
また、1~2割の人に再発しますが、手術が必要になるほど進行する人は約5%です。また最近は手術中に網膜内層の内境界膜を切除するようになってきて、再発率がずっと減ってきています。