概要
眼底の中心(黄斑部)の網膜に孔(あな)が開く病気です。黄斑部は物を見るための中心ですから、黄斑円孔になると物が見えにくくなります。最近では手術法の進歩によりほとんど黄斑円孔は閉鎖することができるようになっています。原因は眼の老化、とくに硝子体(しょうしたい)の加齢による変化です。硝子体の最も外側、網膜と接する部分を硝子体皮質といいますが、加齢とともに黄斑部網膜に接する硝子体皮質に接線方向の張力が加わります。すると、網膜と硝子体皮質は中心部で強く接着しているため、網膜の中心に前方への牽引力が加わり、黄斑部網膜に亀裂が入って黄斑円孔ができると考えられています。このように黄斑円孔は高齢者に多い病気ですが、眼の打撲などで若い人にも起こることもあります。
症状
多くの場合、変視症(物がゆがんで見える)で始まります。黄斑円孔による変視症は特徴的で、よく「すぼんで見える」「吸い込まれるように見える」と表現されます。 視力は初期には比較的良好ですが、進行するにつれて下がっていき、最終的には矯正視力が0.1以下まで低下する場合もあります。これらの黄斑円孔の症状に気づいたら早急に眼科専門医の診断を受ける必要があります。早く手術をするほど円孔が閉鎖する率は高く、視力の回復は良好です。 手術は一刻を争うわけではありませんが、早く手術を受けるに越したことはありません。時間がたちすぎると、円孔は閉鎖しても視力はあまり回復しなくなります。
診断
1)眼底検査
瞳から網膜の状態を診る眼底検査で、黄斑円孔は一目瞭然です。進行の過程によって、ステージ1~4に分けられています。
2)OCT(光学的干渉断層計)
最新の機器であるOCTは、右図のように黄斑円孔の断面をきれいに映し出すことができます。黄斑円孔は、かつては中心部の網膜がくり抜かれてできると考えられていました。しかし、今ではOCTなどの検査機器の進歩により、針で突いたような小さな孔が周囲に拡大したものであることがわかっています。
治療
黄斑円孔は目薬や内服薬では治りません。硝子体手術が唯一の治療法です。手術で重要なポイントの1つは、硝子体を網膜から剥離することです。最近は内境界膜(網膜最表面の膜)を併せて取り除く方法が一般的です。
もう1つの重要なポイントは手術の最後の過程で眼の中に入れる特殊なガスや空気、シリコンオイルです。術後数日間うつ伏せの体位をとることにより、円孔を閉鎖させます。四六時中うつ伏せの姿勢を続けるのは、かなりつらいですが、それにによって90%以上は円孔が閉鎖するようになっていますから、がんばる甲斐はあります。円孔が閉鎖すると、直後から変視症は大幅に改善しますが、視力の回復はさまざまです。