網膜色素変性症

概要

 網膜色素変性症は網膜に異常をきたす遺伝性、進行性の病気です。網膜には色々な細胞が存在していてそれぞれが大切な働きをしていますが、網膜色素変性症ではこの中の視細胞という細胞が最初に障害されます。視細胞は目に入ってきた光に最初に反応して光の刺激を神経の刺激すなわち電気信号に変える働きを担当しています。視細胞には大きく分けて2つの種類の細胞があります。ひとつは杆体細胞で、この細胞は主に暗いところでの物の見え方や視野の広さなどに関係した働きをしています。もうひとつは錐体細胞で、これは主に中心の視力や色覚などに関係しています。網膜色素変性症ではこの二種類の細胞のうち杆体が主に障害されることが多く、このために暗いところで物が見えにくくなったり(夜盲)、視野が狭くなったりするような症状を起こします。そして病気の進行とともに視力が低下してきます。またひとくちに網膜色素変性症といっても原因となる遺伝子異常は多くの種類がありますし、それぞれの遺伝子異常に対応した網膜色素変性症の型のあるため症状も多彩です。また、明らかな遺伝が確認できる患者さんは全体の50%で、後の50%では確認できません。しかし、遺伝が確認出来ない場合でも遺伝子のどこかに異常であると考えられ、ほとんどはなんらかのかたちで遺伝と関係するものとして考えられています。

症状

 視細胞の障害にともなった症状がでてきます。最も一般的な初発症状は暗いところでの見え方が悪くなること(夜盲)ですが、生活の環境によっては気がつきにくいことも多いようです。 最初に、視野が狭くなっていることに気がつくこともあります。ひとにぶつかりやすくなる、あるいは車の運転で支障がでるといったことが気づくきっかけになります。 視力の低下や色覚異常は、さらにあとから出てくるのが典型的です。この病気は原則として進行性ですが、症状の進行のはやさには個人差がみられます。さらに症状の組み合わせや順番にも個人差がみられ、最初に視力の低下や色覚異常で発見される場合もあり夜盲は後になる患者さんもいます。

診断

一般的に以下の様な検査を行い、診断します。

(1)眼底検査

定型例では網膜血管が細くなったり、網膜(色素上皮)の色調を変化を認め、病気が進むと骨小体様色素沈着というものが発症するのが特徴的です。

(2)視野検査

病変の部位に一致した視野狭窄を認めます。進行すると、視野の中心部分しか見られなくなる場合もあります。

(3)視力検査

病変が進行し視野が狭窄した後に徐々に視力低下が始まる傾向にあります。病変が網膜の中心(黄斑部)におよぶと比較的短期間に視力低下が進行する場合もあります。また、白内障を合併することが多く、白内障による視力低下をきたす場合もあります。

(4)網膜電図検査(ERG)

電極の付いた特殊なコンタクトレンズを角膜の上に乗せ、目に光を当てて、その反応を器械で読み取ります。この病気では網膜電図(ERG)の振幅低下を認めます。

(5)蛍光眼底造影検査

腕の静脈から特殊な蛍光造影剤を注射し、その後眼底写真を何枚も撮って、その変化を診る検査です。網膜色素上皮萎縮および網脈絡膜萎縮による過蛍光を認めます。

治療

 遺伝子治療、人工網膜、網膜再生、視細胞保護治療などについて研究が推進されてはいますが、未だに治療法が確立されていません。しかし、この病気に合併する可能性がある、白内障や黄斑浮腫に対しては、手術など通常の治療が行われています。